退職勧奨と失業保険(特定受給資格者)
今回は、退職勧奨で辞めた場合の失業保険について書きたいと思います。
退職勧奨で話が付いて、合意して辞めた場合、失業保険に関してはどうなるのでしょうか?
特定受給資格者になります
以前の記事でも書きましたが、退職勧奨の結果、退職する場合、離職理由は、「退職勧奨による」ということで特定受給資格者となり「会社都合」と同じ扱いになります。
退職勧奨、解雇、倒産などで辞めた場合は、特定受給資格者となります。
【参考】
■特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲
■特定受給資格者の判断基準
■特定理由離職者の判断基準
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特定受給資格者となれば、様々な面で優遇されます。
どのような優遇があるのか見て行きましょう!
支給開始日が早い
特定受給資格者になれば、早く給付を受けれます。
「自己都合」で離職した場合は、7日間の待機期間があり、その後、3ヶ月の給付制限があります。
この 7日 + 3ヶ月 の間は、失業保険(雇用保険の基本手当)が支給されません。
入金されるのは、約4ヵ月後になってしまいます。
それに対して、「特定受給資格者」になれば、給付制限が無くなりますので、7日間の待機期間だけで給付されるようになり、1ヵ月後には入金があります。
離職してからの生活を考えたら、すぐに給付された方が助かりますからね。
表で見てみましょう!
退職日から、1年が経過すると給付日数が残っていたとしても給付されなくなります。
離職したら、なるべく早く手続きに行くようにしましょう。
給付日数が多い
この給付日数に関しては、雇用保険をかけていた日数によって変わってきます。
当然ですが、長く雇用保険をかけていた人の方が優遇されます。
これも表で見てみましょう!
※自己都合退職した方です。
※障害者等です。
※特定受給資格者、特定理由離職者(会社都合で辞めた方)
この表を見てもらえばわかるように「特定受給資格者」と「一般の受給資格者」では、給付日数が違います。
最大で給付日数が180日も変わってきます。
180日といえば、1日の給付額が5000円だったとしたら、90万円も変わることになります。
つまり、「特定受給資格者」となるか、「一般の受給者」になるかの違いで、あなたのもらえる金額は90万円も変わることになってしまいます。
給付日数の延長が受けれる(個別延長給付)
失業保険の給付日数が終了したときに就職が決まっていない場合、一定の条件を満たしていれば失業保険の給付日数が原則60日延長されます。
一般の受給者であれば、延長はされません。
一定の条件とは、以下の様になっています。
- 安定した職業に就いた経験が少なく、離職又は転職を繰り返している、離職日において45歳未満の人
- 雇用機会が不足していると認められる地域として厚生労働大臣が指定する地域に居住する人
- 厚生労働省令で定める基準に照らし、受給資格者の知識、技能、職業経験その他の実情を勘案して、公共職業安定所長が再就職のための支援を計画的に行う必要があると認められた人
上記の1.2.3.の条件を満たしていれば、給付日数が延長されます。
個別延長給付の対象となるか否かについては、所定給付日数分の受給を終える失業認定日に公共職業安定所の職員から伝えられます。
これも特定受給資格者でないと延長されません。
60日延長されたら、1日の支給額が5,000円だとしたら、合計で30万円も多くもらえることになります。
「自己都合」にされるとこの個別延長給付もしてもらえません。
詳しくはこちら→「個別延長給付について」
この様に特定受給資格者になると優遇されます。
しかし、会社は、「会社都合」になるのを嫌がります。
会社が「会社都合」を嫌がる訳 → 「退職勧奨は、会社都合?自己都合?」
退職勧奨をして辞めさせたのに離職票の退職理由欄に「自己都合」と書いてくる場合があります。
自己都合と書かれた離職票を持ってハローワークに行き、手続きを進めていくと、「自己都合」として処理されてしまいますので、きちんと確認して対処するようにしましょう。
このように退職勧奨されて辞めた場合、失業保険(雇用保険の基本手当)においては、様々な優遇があります。
会社は、「自己都合」にしたくて、あなたに色々と仕掛けてくるかもしれませんが、負けないようにしましょう。
しつこいようですが、退職勧奨をされ辞めた場合は、「特定受給資格者」となり会社都合と同じ扱いとなります。
詳しく知らずに「自己都合」で処理されしまったりしたら、後から後悔することになってしまいます。
覚えておいて、会社に都合よく利用されないように気を付けましょう。
【関連記事】
■失業保険
■うつ病などで会社を退職した場合
今回は、ここまでにします。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
【次回】
退職勧奨をされた場合は、「会社都合」と同じ扱いになりますのでよく覚えておいて下さいね。
退職勧奨に応じる気がないから断った場合、会社は、しつこく退職勧奨をしてくる場合があります。退職勧奨は違法ではありませんが、あまりにしつこい退職勧奨は退職強要とみなされ違法となります。
次回では、どういった場合が違法とみなされるのか、裁判例を見ていきます。
>次 (退職強要とされたケース)