従業員がミスをしたので解雇する!?
従業員がミスをしたからと言って、解雇することは可能でしょうか?
いわゆる成績不良や勤務態度不良などですね。
成績不良などの理由での解雇は出来るのでしょうか!?
従業員は、業務を行なっていると様々なミスをします。
しかし、そういった場合でもすぐに解雇ということは出来ません。
どんなミスであろうと1回のミスで不適格の烙印の押され、解雇にするという様な横暴なことは出来ません。
人間というのは、誰でもミスをします。
注意する側の上司でもミスはする訳ですからね。
ミスをした場合、会社側がその従業員に対して、どれくらい指導したか、どの様な教育措置をしたのかに裁判所は着目するようです。
解雇ということが従業員の生活に大きな不利益をもたらすことを考えると例えミスをしたとしても会社側が何の措置も取らずにいきなり解雇ということは基本的に許されません。
ある事例を見てみましょう。
この事例は、ある会社の従業員が「勤務成績の不良」という理由で解雇された件です。
会社側は、「原告は身勝手な言動、非常識な行動を繰り返してきた」と主張しました。
裁判所は、勤務成績不良と職務不適格の一態様であるとしたうえで、これが解雇事由になるかどうかを判断するにあたっては、以下の点を総合考慮して決すべきであるとしました。
- 客観的合理的な基準によるべきこと
- 解雇理由該当事実が解雇をもって臨まなければならないほど質的にまた程度的に重大な事実であるかどうか
- 使用者側が労働者に改善矯正を促し、努力反省の機会を与えたのに改善がなされなったかどうか
- 指導による改善可能性が見込めないかどうか
- 職場の規律維持に重大な影響を与えたり、業務遂行に重大な支障を与えたかどうか
- 会社の側に落ち度がなかったどうか
これらの基準に照らして判断した結果、結論的に解雇事由の存在を否定しました。
従業員に諸問題があったとしても…
つまり、従業員に諸問題があったとしても簡単には解雇することは出来ないということです。
それを指摘し、改善努力を促すなどの指導をこまめに繰り返すべきであったし、そうすることも十分可能であったにも関わらず、実際に原告が勤務態度について改善等の指導を受けたのはわずかな機会にとどまる
会社は原告の勤務態度が適切でないことを認識しながら、原告に対して適切な指導、改善命令そ下すことなく長期間にわたってこれを看過してきたともいえる
と指摘しました。
解雇事由として成績不良が主張される場合、訴訟や労働審判の中で裁判所が重視するポイントの一つとして、従業員に対する改善指導の具体的な経緯とそれがわかる客観的な資料があるのかという点がありますが、その背景には上記の様な認識があるといえます。
指導の例
※懲戒処分の内容や方法は就業規則に記載しておかないといけません。
- 該当の従業員に対して口頭で注意や指導をして様子を見る。このときに従業員の言い分を聞いて、同時に会社の考えも理解させる。
- それでも改められないのであれば、業務改善指導書などを利用し書面にて注意を促す。従業員が改善する意思があるなら業務改善指導書にサインをしてもらう。
- それでも改められないのであれば、2~3回、始末書を提出させて様子を見る。
- それでも改められないのであれば、減給や出勤停止などの懲戒処分を行なう。このときに改善されなければ解雇もありえる旨を懲戒処分通知書に記載しておく。
- それでも改められないのであれば、解雇を行なう。
この例のように会社が従業員を解雇にするには、これくらい段階を踏んで処分を行なっていかなければなりません。
つまり、会社はここまで従業員に対して指導を行なう必要があるということです。
ここまで指導されて改善されなかったら、誰でも解雇されても仕方ないと思いますよね。
つまり、成績不良という解雇理由が「客観的合理的な理由」と「社会通念上相当である」と認められるということはこういうことなんです。
これくらいの指導をしていないのであれば、ミスをしたからといって、それを理由に解雇は出来ません。
つまり、労働者にとって解雇というのは極刑である訳ですから、ここまで厳重に法律で守られているということです。
【労働契約法16条】
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となる。
成績不良などの理由で解雇されたとしても段階を踏んで指導を受けていないのであれば、不当解雇になる可能性が高いということになります。
※それぞれのケースによって異なりますので、詳しくは弁護士や社労士などの法律の専門家に相談するようにして下さい。
今回は、ここまでとします。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
【次回】
ブラック企業では、平気で不当行為をしたり、解雇したりします。
そんな会社は雰囲気が悪いですよね。
次回は、解雇が及ぼす影響を考えたいと思います。
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