違法な長時間労働ってどれくらい?
年が明けて早くも15日が過ぎようとしています。
そろそろ普段の生活に戻ってきた頃ではないでしょうか?
今日は長時間労働について考えてみます。
先日、三菱電機が長時間労働で書類送検されたニュースを見ました。
見た方もいるかと思いますが、紹介しますね。
三菱電機
入社1年目社員に違法な長時間残業 書類送検
労使協定で定めた上限を超える違法な長時間残業を入社1年目の男性社員(31)にさせていたとして、厚生労働省神奈川労働局は11日、法人としての三菱電機と当時の上司を労働基準法違反(長時間労働)容疑で横浜地検に書類送検した。男性は適応障害で昨年11月に労災認定されている。広告大手の電通に続き、大企業が入社間もない社員に違法な長時間労働を強いている実態が浮かんだ。書類送検容疑は、神奈川県鎌倉市大船5の同社情報技術総合研究所で医療用半導体レーザーの研究開発などを担当した男性(2013年4月入社)に14年1月16日~2月15日に、それまでの倍以上の月100時間を超える時間外労働をさせたとしている。
男性は14年4月上旬ごろに適応障害を発症して休職。休職期間満了後の昨年6月に解雇された。労災認定後の昨年11月25日に東京都内で記者会見し、同社に解雇撤回を求める意向を明らかにしていた。
同社が男性に提供した入退室記録によると、14年1月16日~2月15日の残業は「過労死ライン」の2倍の約160時間だったが、男性は上司の求めで59時間半と過少申告していたという。男性は会見で「上司に『(2月以外は)40時間未満にしろ。毎月39時間だと不自然だから、ばらばらの数字にしろ』と言われ、32~37時間半と記載した」と主張していた。【早川健人】
掲載元 : 毎日新聞 2017年1月11日 11時10分
この様なニュースです。
昨年、ニュースになった電通の件もあり、パワハラや長時間労働による世間の認識も変わってきたように感じます。
しかし、まだまだ長時間労働やパワハラなどで悩まされている労働者もたくさんいます。
このニュースでは違法な長時間労働で書類送検されたと報じられていますが、どれくらい長時間労働になれば違法となるかご存知の方は少ないかと思います。
ということで、今回は長時間労働について掘り下げてみます。
法定労働時間
まず、日本の法律では労働時間の限度が定められています。
それを「法定労働時間」といいます。
「法定労働時間」とは労働基準法で定められた労働時間の限度です。
労働基準法第32条で1週間で40時間、1日8時間と労働時間の限度が決められています。
この法律で決められた労働時間の決まりを超えて働かせることは原則として出来ません。
また、「法定労働時間」に対して、会社ごとに就業規則や雇用契約書で定めている労働時間を「所定労働時間」といいます。
「所定労働時間」は「法定労働時間」を超えて設定することは出来ません。
ここまで読んで、「俺はこの法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)より働かされているぞ」と思う方も多いかと思います。
「なぜ、労働基準法第32条で労働時間の限度が決められているのになぜ残業(法定外労働)が出来るのか?」と疑問に思いますよね。
ここで出てくるのが「36協定」です。
36協定とは?
「36協定」とは労働基準法第36条が根拠になっているので「36協定」と呼ばれています。
労働基準法第36条には以下のように定められています。
労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)抜粋
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。
法律の文章なので少しややこしいですが、わかりやすくすると…
会社が法定労働時間(1日8時間・1週40時間)以上の残業や法定休日(1週1日または4週を通じて4日)に出勤させる場合には、労働組合(労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)と「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、別途「36協定届」を労働基準監督署に届け出なければならない。
ということになります。
つまり、会社が36協定を届け出ていれば、休日出勤や残業をさせても良いということになります。
しかし、会社が労働者に残業させることが出来るとしても限度が決められています。
以下で残業時間の限度を説明します。
法定外労働時間の限度
法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超えて労働時間を延長できる限度は以下の通りです。
一般の労働者と変形労働時間制の労働者では限度時間が変わります。
◆一般の労働者
1週間 : 15時間
2週間 : 27時間
4週間 : 43時間
1ヵ月 : 45時間
2ヵ月 : 81時間
3ヵ月:120時間
1年間:360時間
◆1年単位の変形労働時間制の労働者
1週間 : 14時間
2週間 : 25時間
4週間 : 40時間
1ヵ月 : 42時間
2ヵ月 : 75時間
3ヵ月:110時間
1年間:320時間
会社が36協定を届け出ていてもこの時間を超えて労働者を働かせることは出来ません。
しかし、この限度時間には例外があります。
以下のような理由がある場合、どうしても限度時間を超えてしまうことがあると思います。
- 予算、決算業務
- ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
- 納期のひっ迫
- 大規模なクレームへの対応
- 機械のトラブルへの対応
こういった場合、「特別条項付の36協定届」の届け出をすることで、全体として1年の半分を超えなければ、限度時間を超えた延長をすることができます。
詳しくは → 厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準」
長々と書いてきましたが、なかなか複雑ですよね。
こちらの過去記事にも36協定のことなどを書いてますのでご覧ください。
残業のことについて詳しく書いてます。
「残業(時間外労働)について詳しくなろう①」
長時間労働について色々と紹介しましたが、次は違法とみなされるのはどういった場合か見ていきましょう。
違法とみなされる場合
長時間労働に関わることで労働基準法違反とみなされるのは、以下のような場合です。
36協定を届け出ずに残業や休日出勤させた場合
「36協定」を届け出ていなければ、法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超えて労働させたり、法定休日(1週1日または4週を通じて4日)に出勤させた時点で違法となります。
残業代、休日出勤手当などをきちんと支払っていても違法です。
このような場合、法定労働時間や法定休日についての定め(労働基準法第32条から第32条の5まで、同第35条、同第40条)に違反することになるため、同第119条に則り「6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処されます。
36協定の限度時間を超えて働かせた場合
36協定を届け出ていても36協定の範囲を超えて労働させた場合は違法となります。
この場合も先ほどと同じく残業代や休日出勤手当を支払っていたとしても違法です。
先ほどと同じく、法定労働時間や法定休日についての定め(労働基準法第32条から第32条の5まで、同第35条、同第40条)に違反することになるため、同第119条に則り「6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処されます。
残業代をきちんと支払っていない場合
残業代の基準も労働基準法第37条で定められています。
時間外労働:通常賃金の2割5分(25%)以上の割増賃金
休 日 労 働:通常賃金の3割5分(35%)以上の割増賃金
深 夜 労 働:通常賃金の2割5分(25%)以上の割増賃金
※深夜とは午後10時~午前5時
この残業代の基準通りに支払われていなければ、違法となります。
残業代の支払いに関してはこちらの過去記事をご覧ください。
残業代のことに関して詳しく書いてます。
「残業(時間外労働)について詳しくなろう②」
違法な残業をさせられていませんか?
36協定を周知していない場合
労働基準法第106条、労働基準法施行規則第52条の2において、使用者は就業規則と同様に36協定についても周知しなくてはならないこととなっています。
きちんと周知していない会社が多いようなので「そんなの見たことない。」と思う方が多いのではないでしょうか。
会社が労働者に36協定を周知していない場合は、
法令等の周知義務違反(労働基準法第106条第1項)
30万円以下の罰金(労働基準法第120条)
となり、会社が罰せられます。
違法となる場合をいくつかあげてみましたが、このように会社側がきちんと管理していないと違法とみなされます。
実際には、労働基準監督署が調査をし、法違反の事実が認められた場合、是正勧告を行います。
会社が是正勧告に従わない場合や対応が悪質だった場合、書類送検されることがあります。
あと、会社が労働基準監督署に長時間労働を指摘された際によくある話ですが、「労働者が自主的に残業していただけで会社が指示した訳ではない」と会社に責任はないと言い訳することがあります。
しかし、自主的に残業している従業員を早く帰らせるのも会社側がしなければならない管理の1つです。
会社が労働者に早く帰るように促したとしても労働者が残業していたのであれば、会社は残業代を支払わないといけません。
最後に…
長時間労働に関する決まりを色々と説明しましたがいかがだったでしょうか?
少しややこしいですが、あなた自身が身を守るためにも知っておいた方が良いことをまとめてみました。
あと、今回の記事で最初に紹介した三菱電機のニュースなんかは酷いですよね。
月45時間と限度が決まっている時間外労働を月100時間超もさせていました。
また、上司も法律違反なのをわかっていて、「40時間未満にしろ」と指示している訳ですからとんでもないですね。
あなたの職場は大丈夫ですか?
まだまだこのようなことをしているブラックな会社はたくさんあります。
例えば…
- 残業させるときはタイムカードを押さしてから残業させる。
- 休日出勤のときはタイムカードを押させない。
- そもそもタイムカードが存在しない。
- 会社が勝手に過少なタイムカードを付けている。
- 残業しても残業代が出ない。(サービス残業)
- 法律で決められた時間を超えて働かされている。
などなど…。
あなたの職場は大丈夫ですか?
上記のようなことがあれば、要注意です。
毎日、出勤時間と退社時間をメモしておくようにしましょう。
労働時間を把握しておくことで後からトラブルになった場合、役立つことがあります。
また、過去記事になりますが、こちらもオススメです。
こちらで職場チェックが出来ます。
「あなたの職場はブラック企業!?チェックしてみよう!」
あなたの職場は大丈夫ですか?
働くのであれば気持ち良く働きたいですよね。
しかし、会社の利益ばかり考えて従業員に辛い思いをさせている会社が多いのも事実です。
会社はあなたを守ってはくれません。
自分の身は自分で守るしかありません。
そのためにもあなたの職場がブラック企業かどうか把握しておきましょう。
私も元勤務先で働いていたときに月100?120時間の時間外労働を行なっていました。
その影響で今でもうつ病で苦しんでいます。
このブログを読んでくれているあなたにはそんな目に遭って欲しくないと強く思います。
今回は、ここまでにします。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。