労働契約について
労働者が働くことになるということは、使用者と雇用関係になる訳です。
会社との雇用関係になるときに取り交わされる契約を労働契約といいます。
労働基準法では、この労働契約の内容である労働条件が労働者に不利にならないように規定を設けています。
労働契約とは
労働者は会社に就職すると仕事が与えられます。
仕事をすることにより、その対価として賃金をもらいます。
会社は、労働者に賃金を支払う代わりに仕事をしてもらうことになります。
このときにお互いに「どのような仕事をしていくらもらえるのか?」、「労働条件はどうなのか?」について取り決めた契約のことを労働契約といいます。
就業規則、労働基準法を下回る労働契約は無効になる
労働契約は、就業規則、労働基準法などで決められた基準を下回るような契約にしてはいけません。
基準を下回るような条件の場合、その部分は無効となります。
例えば、労働基準法では、1日の労働時間の上限を8時間と定めていますので、1日の労働時間を9時間と定めた労働契約はその超えた1時間の部分は無効となります。
労働時間は、8時間と定めたものとして取り扱われます。
労働条件の明示義務
就職が決定して、職場で働き始めたのに「最初に聞いていた話と違う」、「こんな条件だと知らなかった」といったトラブルが発生することがありますよね。
しかし、他に良い就職口も見つからないので泣き寝入りして我慢して働いている方もたくさんいるかと思います。
労働基準法ではそういったトラブルを未然に防止し、弱い立場の労働者を保護するための規定を設けています。
労働基準法15条1項
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
つまり、会社は労働者の採用が決まって働くことになったら、労働条件を書面にて労働者に明示しなければなりません。
いわゆる、労働契約書(雇用契約書)というものですね。
労働契約書(雇用契約書)すらないというブラック企業もありますが、そんなのは論外です。
明示すべき項目
明示すべき労働条件には、「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」があります。
【絶対的明示事項】
- 労働契約の期間に関する事項
- 期間の定めのある労働契約(有期雇用契約)を更新する場合の基準に関する事項
- 終業の場所および従事すべき業務に関する事項
- 始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りおよび支払いの時期ならびに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の自由を含む)
【相対的明示事項】
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項
- 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与ならびに1か月を超える期間を基礎として支給される精勤手当等ならびに最低賃金額に関する事項
- 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
- 安全および衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰および制裁に関する事項
- 休職に関する事項
明示の方法
絶対的明示事項は、書面により、必ず明示しなければなりません。
あなたが会社で判を押した労働契約書には絶対的明示事項が記載されていますか?
記載されていないのであれば、違反になります。
相対的明示事項の中で会社で定めがある場合は、明示しなければなりません。
定めがないのであれば明示する必要はありません。
また、相対的明示事項は、口頭による明示でも差し支えありません。
労働者の即時解除権
労働者は、労働条件が事実と違っていれば、即時に契約解除できます。
労働基準法第15条2項
第1項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は即時に労働契約を解除する事ができる。
例えば、完全週休2日制で土曜日と日曜日が休みという条件を明示されて労働契約を結んだのにかかわらず、毎週土曜日の出勤を強制されるような場合は明らかに契約条件と異なります。
このような場合には労働者は即時に労働契約を解除することができます。
今回は、ここまでにします。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
【次回】
労働契約について書きましたが、次回は労働契約に関係する話を書きます。
契約というのは、双方が合意した上で結ばれる訳ですから、勝手に変更することは出来ません。
>次 (会社が勝手に給料を下げれるのか?)
>戻る (働くルールを知ろう)