地位保全または賃金仮払いの仮処分
解雇されて、その解雇が有効か?無効か?ということで会社と戦うことになった場合、最終手段としての裁判がありますが、裁判となった場合、1~3年ほどの期間を要します。
解雇されて収入が無いわけですから、労働者は生活が出来なくなりますよね。
このような労働者の困った状況を解消するために「地位保全または賃金仮払いの仮処分」というものがあります。
生活費の心配をすることなく戦うために
いきなり本裁判(普通の民事裁判)といっても判決が出るまで収入なしで過ごすことになり、生活が出来なくなってしまいます。
例外的にこれまでの貯金が十分あって生活に困らないというような場合は仮処分はせずに本裁判となりますが、そういったケースは、あまり多くありません。
本裁判を行なう前に通常は、たいがい地位保全または賃金仮払いの仮処分を申し立てます。
地位保全または賃金仮払いの仮処分とは
会社が従業員を解雇したのに対して、従業員が解雇が無効だということで裁判で訴えた場合、決着が付くまでに1~3年の期間を要します。
その間、会社が従業員に賃金を支払わず、就労を拒めば、従業員およびその家族は生活上の危険にさらされることになってしまいます。
そこで従業員は、仮処分を申立てることになります。
労働問題における仮処分には、
地位保全…労働者が使用者に対して労働契約上の地位を有することを仮に定める。
賃金仮払…労働者が使用者に対して賃金相当分を仮に支払う。
とがあります。
本裁判で、解雇の効力が確定するまでの間、その従業員が会社の従業員である地位を仮に定める旨の裁判をしてもらいます。
この仮処分により、申立てが認められれば、今まで通りの賃金をもらうことになり、生活の心配をすることなく裁判に望むことが出来ます。
この仮処分に関しては、申立後3か月程度をめどに決定します。
また、解雇から申立までに何ヶ月か経過していると、「その間どうして申立をしなかったのか?」、「仮処いをしなくても生活が出来るのではないか?」と取られる場合がありますので、なるべく早く行動し、生活が成り立たないことを訴えた方が得策です。
地位保全または賃金仮払いの仮処分の流れ
それでは、仮処分を申し立てるとどういった流れになるのか見てみましょう。
①申立書提出
労働者が裁判所に、申立書と証拠書類を提出
・被保全権利(守ってもらいたい権利基・従業員たる地位など)
解雇が無効だと思われる具体的理由
・保全の必要性
本裁判の判決を待っていては、著しい損害があることの説明。
または早急な救済措置が必要であることの説明。
・証拠書類
今までの経験してきたことを書いた陳述書など。
具体的な資料があれば提出して説明します。
②審尋
裁判所が労働者側と会社側から事情を聞きます。
仮処分では当事者尋問や証人尋問は行われず、答弁書によるやりとりが基本です。
- 相手の主張に反論しながら、証拠書類や陳述書を提出します。
- 10日から2週間に1回程度のペースで審尋が数回行われます。
- 審尋の際、裁判所が双方の主張を整理して和解を提案してくることがあります。
- 双方が和解案に合意した場合は、和解文書を交わし解決となります。
③仮処分の決定
- 和解が成立しない場合、裁判所が認容か却下を決定
- 裁判所は通常訴訟の判決にあたる決定を出します。
- 解雇が違法だと判断された場合でも、賃金仮払いの仮処分だけが認められ、地位保全の仮処分は認められることはあまりありません。ただ、社会保険の資格維持や福利厚生施設の利用などから、認められることもあります。
本案訴訟の提起
債務者(申立を受けた側)から訴訟の提起を申立てられたら、裁判所は債権者(申立をした側)に、2週間以上の一定期間内に、本案訴訟の提起を命じなければなりません。
本案訴訟を提起しなかった場合は、仮処分命令は取り消されます。
弁護士さんとよく相談して判断して下さい
大まかなことを説明しましたが、本裁判で戦うことになれば、仮処分というものがあると覚えておいて下さい。
今後、会社と戦うとなった場合の参考になれば幸いです。
実際にあなたが会社と戦うとなった場合、この仮処分の申立てなども自分でやるのは困難ですし、弁護士さんを依頼することになるかと思います。
依頼した弁護士さんと良く相談して判断するようにして下さい。
最後にですが、最近では、本訴訟は行わずに労働審判を行なう方も増えています。
労働審判
労働審判は、3回以内の期日で結論を出す手続きです。
和解の可能性が相当程度ある場合には、労働審判を申し立てることが多くなっています。
こちらの記事で労働審判のことを説明しています。
労働審判
早く決着を付けたいのであれば、労働審判がお勧めです。
しかし、会社と話し合っても解決の余地がなく和解の可能性もないと思われる場合、または絶対に現職復帰、金銭解決の余地はないと考える場合は、本裁判を行なうことになります。
今回は、ここまでにします。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
【次回】
次回は、「仮処分」について書いていきます。
裁判をするとなったら、裁判している期間の収入が心配になります。
そういった場合のために「仮処分」があります。
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