傷病手当金と労災認定について
会社での長時間労働、パワハラやセクハラ、嫌がらせなどが原因でうつ病を発症した場合、労災保険の申請をすることが出来ます。
今回は、このことについて紹介しますね。
まず、病気や怪我で仕事を休むことになった場合、加入している健康保険(社会保険)から、傷病手当金を給付されるのは、ほとんどの方がご存知だと思います。
しかし、業務が原因で怪我や病気になった場合は、労働災害となり、労災保険から保険給付を受けることが出来ます。
傷病手当と労災保険、どちらも休業補償がありますのでよく似ていますが、どこが違うのかもう少し詳しく説明しますね。
傷病手当とは…
傷病手当金とは、私生活での病気や怪我で働けず、その結果、給料がもらえない場合に、社会保険から給付されます。
あなたが加入している、または加入していた社会保険(健康保険協会又は健康保険組合)から傷病手当金が給付されます。
あなたの毎月の給料から社会保険料を控除して納付しているのです。
傷病手当金は、働けない期間、安心して療養するための休業補償として給付されます。
※国民健康保険に加入している方は傷病手当金は給付されません。
労災保険とは…
労災(労働災害)とは、労働者が業務中および通勤時に、負傷(怪我)、疾病(病気)、障害、死亡する災害のことをいいます。
労働者を一人でも使用する事業は、適用事業として労災保険法の適用を受けることになります。
事業主は、加入の手続をとり(保険関係成立届の提出)、保険料を納付しなければなりません。
保険料は全額事業主負担とされています。 加入は事業場ごとに行うもので労働者ごとではありません。
したがって適用事業場に勤務している労働者であれば誰でも、業務上災害又は通勤災害により負傷等をした場合は保険給付を受けることができます。
労働者とは、正社員のみならずパート、アルバイト等、雇われて賃金を支給される方すべてをいいます。
つまり、業務上の病気や怪我は、労災保険から保険給付を受けることになります。
そして、業務外の病気や怪我で休んだ場合は、傷病手当金の給付を受けることになります。
わかりやすくするために図にしてみました。
傷病手当金の場合は、休んだ場合の休業補償のみとなります。
労災保険の場合は、休業補償に加えて医療費も保険給付で支払われます。
支給される額も労災保険の方が多くなります。
傷病手当金の場合は、給料1日分の3分の2が給付されますが、労災保険の場合は80%です。
それに労災保険の場合は、医療費も無料になりますので、手厚い補償を受けることが出来ます。
経営者は労災保険を使うのを嫌がります
労災は労働基準監督署に申請します。
労災申請をすると労働基準監督署の職員が調査をし判定します。
勤務先にも労働基準監督署の職員が調査に入ります。
そうなったら、会社に居づらくなる可能性もあります。
事業所は、事故や怪我が起きないように職場の安全に配慮する義務があります。(安全配慮義務)
あまり労災保険を使うことが多いと安全配慮義務違反ということで労働基準監督署に目を付けられることもありますので事業所は労災保険を使うことをよく思いません。
うつ病などの精神疾患の労災認定は難しい
うつ病などの精神疾患が会社のせいだという話になると余計に会社は認めたくないですよね。
先程も書きましたが、事業所は安全配慮義務があるのにパワハラやセクハラをしてるのであれば、労働者は安全に働くことが出来ません。
会社が自ら安全配慮義務違反を起こしていることになります。
また、労働者は、会社のせいだと労働基準監督署に訴えたとしても精神疾患が会社のせいと認められるだけの事実があるかどうかを判定するのが難しいのです。
例えば…
作業中に指を挟んで怪我をしたというような場合は、誰がどう見ても業務上の怪我です。
労働基準監督署に申請をして、労災だと認められれば、労災保険が適用されます。
労災認定されたら、指を怪我した治療費も労災保険から給付されます。
パワハラの証明は難しい
精神疾患の場合でも会社のパワハラや嫌がらせ等の行為が原因で精神疾患を発症したということを証明しなければなりません。
労働者から、パワハラや嫌がらせをされた事実があったとしても会社はなかなか認めません。
会社は、「そんな事実はない」などと否定してくるでしょう。
また・・・
本当に会社の行為が原因なのか? 私生活で何か原因になることがあったのではないか?
ということも検討していきますので、時間がかかります。
結果が出るまで時間がかかり認定率も低い
労災申請をしてから判定が出るまで、6ヵ月~1年くらいかかり、その上で労災認定される確率は、3~4割です。
※平成25年度 精神疾患での労災
申請件数 1,409件 認定件数 436件 (36.5%)
こういった事情もあり、うつ病などの精神疾患になったとしても労災申請をする人は少ないのです。
労災認定に関しては、もう少し続きます。
今回は、ここまでにします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。